姿勢や歪みなどの「身体の構造」と腰痛は深く関わっています。治療家の視点から「腰痛」を構造面から解説します。
日本東洋医学会会員 パシフィック・アジア・カイロプラクティック協会会員 鍼灸師 ・ カイロプラクター アゼガミ治療室 所長 畦 上 和 彦
身体の構造的にみると、背骨・腰の歪みは、腰痛だけでなく全身の様々な症状に影響を与えると考えられます。 ■骨のバランスで立つことが大切 「背骨のS字カーブを正しく保つ」・・・すわなち、骨格が正しく並んでいれば、ほぼ骨のバランスで上手に身体を支えることができます。 しかし骨格が歪んでいるとそれができないので、筋肉や靭帯、椎間板などに負担をかけて身体を支えることになります。ただ立っているだけでも負荷はかかり続け、それが長年つみ重なって、様々な障害を産み出してゆきます。 また、背骨や腰の歪みは腰の障害だけにとどまらず、足や腕、首や頭部・・・と全身に密接に関係します。 たとえば頚椎ヘルニアなどの首の痛みは腰の歪みから引き起こされることが多く、変形性ひざ関節症では骨盤と大腿骨の関係や腰椎などに問題があることが多いです。首やヒザが痛いと言ってもその部分にだけ注目すればよいのではなく、腰からの関連も見なければならない。全身のバランスをみて、根本的な原因を捉えていくことが大切です。 ■骨格と筋肉の関係 骨格は筋肉に支えられています。骨格が歪んでいると、体が倒れてしまわないように筋肉が2種類の緊張で固定しようとします。それは、張って引っ張る筋肉と縮んで固まる筋肉。長い間の姿勢の習慣でガンコに“くせ”がついています。 正しい姿勢に戻すためにはこの筋肉の“くせ”がとれなければいけません。 腰痛にいいからと「腹筋・背筋を鍛える」筋トレに励む方もいらっしゃいますが、その“くせ”を持ったままで筋肉を強化することは、歪みをさらに強固にかためることになり正しい姿勢に戻す妨げになる可能性があります。また、ただでさえ腰に問題を抱えた人が行う筋トレは首や腰を痛めがちで、かえって状態を悪くしてしまうことも珍しくありません 。 腹筋・背筋は大切ですが、やみくもに筋トレをする・・・というのは賢明ではないと思います。 ■正しい姿勢が大切。運動はウォーキングで。 まずは正しい姿勢を保って生活すること。骨のバランスに上手く乗っかって立つことにより筋肉や靭帯などの負荷が軽減され、身体の構造が歪む原因が減ります。 また、正しい姿勢を保って生活すること自体が腹筋・背筋を鍛えることにもなります。 当治療室では、ソフトなカイロプラクティックと鍼灸の施術により筋肉を調整して骨格が正しい位置に戻れるようにキッカケを作ります。患者さんには日々の生活の中で腰に負担をかけない立ち方・座り方に注意することを指導しています。 特に座り方は大切です。長時間の乗り物や柔らかいソファなどは腰に負担がかかるので避けた方が良いでしょう。治療効果を妨げる可能性があるので、治療がある程度進むまでは筋力トレーニング等はしばらく控えてもらうようにしています。 自分で行う運動療法としては「散歩」をおすすめします。 歩くことは改善された姿勢を馴染ませるのにとても良いのです。 正しい姿勢で身体を支えながら無理のないペースで歩くことによって、本来発達すべき筋肉が鍛えられ、また心肺機能を保ち全身の血液の循環もよくなります。自分でできる筋肉調整・コンディショニングにウォーキングはもってこいなのです。 戸外に出て歩くことは精神衛生的にも良いので、心身の健康のために散歩にでかけてください。
正しい姿勢について 背骨の自然なS字カーブを保った姿勢が良いわけですが、長年傾いた姿勢を続けているとお腹の筋肉が縮んで固まってしまい正しい姿勢をとることが難しい場合があります。無理に正しい姿勢にしようとして反りすぎてしまったり、かえって腰に負担のかかる姿勢になってしまうこともあるので注意が必要です。 当治療室では治療の状況を見て正しい姿勢を指導するようにしています。 座り方はとても重要です たとえばイスに浅く腰かけて腰を丸くしてイスの背にもたれかかって座る姿勢は骨盤の後傾を招きます。またいつも同じ方向に斜めに座ったり左右の片側にばかり体重を乗せる座りグセは左右に歪みやすくします。 ソファ等のやわらかいイスは避け、平らな硬いイスにまっすぐに座るとよいと思います。 床に座る場合は、あぐらや横座りは腰によくないので正座がよいでしょう。 特に腰の状態の悪い人は座る時間を短くして、長時間の乗り物・車の運転は腰に負担がかかるので避けた方がよいでしょう。
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