●パニック障害って何?症状や特徴、治療法などについてわかりやすくまとめてみました。
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●パニック障害とは? 突然 胸がドキドキし 胸がしめつけられ 息ができなくなり このまま死ぬのではないか、気が変になるのではないか という強い不安におそわれる・・・ 思いがけない事態が起きたときに一時的にパニック状態に陥ることは誰にでも起こりうることですが、特に何の原因もなく、また体に悪いところがあるわけでもないのにこのようなパニック状態に陥るのが「パニック障害」です。 この先に起こる危険を察知して心の準備をしたり緊急事態に備えた体の状態にするのは生き物として当然の反応ですが、実際には危険が迫っていないのに誤って非常事態ととらえてしまい様々な心身の反応を起こしてしまうのだと考えられています。 ○決して珍しくない病気 日本では認知されてきたのは最近ですが、100人に1人はパニック障害にかかったことがあるとも言われており、そう珍しい病気ではないのです。 パニック障害自体は命に関わる病気ではなく、慢性化することもありますが早い時期に適切な治療をすれば治りやすい病気だとも言われています。 ○不安障害の一つ 昔は不安神経症や心臓神経症と一緒に扱われていましたが、現在では「パニック障害」として区別されています。 パニック障害は「不安障害」の一つに分類されます。 不安は誰もが持っている感情ですが、繰り返し起こり頭を離れない病的な不安で日常生活に支障をきたすような状態を「不安障害」といいます。
ページトップへ ●パニック障害の代表的な症状 ○パニック発作−突然激しい発作に襲われる!!− 突然何の理由もなく激しい不安とともに胸がドキドキする、しめつけられる、息ができないなど、主に心臓を中心とした自律神経症状が複数重なって起こります。 症状は10分以内にピークに達し、数分から一時間以内におさまることがほとんどです。 「死ぬのではないか」と恐怖し、救急車で病院に運ばれても、その頃には症状は治まっており、検査をしても身体はどこも悪くないので異常はみつかりません。 ○予期不安−また発作が起きるのでは・・・といつも不安に− また恐ろしいパニック発作が起きるのではないかと発作を予測し悩み心配し、今度こそ死んだりあるいは狂ってしまうのではないか、などの不安にとらわれます。 また、自分は重い病気なのではないか、発作が起きても誰も助けてくれないのではないか、その場所から逃げ出せないのではないか、恥をかくのではないか、人に迷惑をかけるのではないか、などの不安を訴えたりします。 ○広場恐怖−その“場所”にいくとまた発作が起きそうで怖い− 「またその場所に行ったら発作がおきるのではないか」「もしも逃げ場のない場所でパニック発作がおきたら・・・」などと思うことから、公園や大通り、人ごみ、電車やバス、エスカレーター、美容室・理容室などの椅子やスーパーのレジ待ちなど、発作が起きても他人ばかりで助けが得られなかったり、そこからすぐには逃げられなさそうな場所を恐れ避けようとします。 そのため一人では外出や電車に乗ることができなくなることも多く、恐怖を感じる場所に近づくだけで心臓がドキドキしたり息苦しくなったりすることもあります。 ページトップへ ●パニック障害の診断 ○専門は精神科や心療内科 症状が出た当初は身体の異常を調べるべく内科などにかかることになると思いますが、パニック障害の診断や治療は精神科(精神神経科)や心療内科が専門です。 ○パニック発作なのか? 次のような症状のうち、4つ以上の症状が突然起こり10分以内にピークに達する場合がパニック発作とされています。(以下はパニック障害の診断基準の一部です) ・動悸、心悸亢進、または心拍数の増加 ・発汗 ・身震いまたは震え ・息切れ感または息苦しさ ・窒息感 ・胸痛または胸部不快感 ・吐き気または腹部の不快感 ・めまい感、ふらつく感じ、頭が軽くなる感じ、気が遠くなる感じ ・現実感消失または離人症状(自分が自分でないような感じ) ・コントロールを失うこと、または気が狂うことに対する恐怖 ・死ぬことに対する恐怖 ・異常感覚(感覚麻痺またはうずき感) ・冷感または熱感 (「DSM-W精神疾患の分類と診断の手引き」より) ○パニック障害の診断 「パニック発作の症状を一回経験した=パニック障害」ということではありません。 ・予期しないパニック発作が繰り返し起こったり、 ・発作後また発作が起こるのではという予期不安や死んだり狂ったりするのではという恐怖、心疾患などを起こすのではないかという心気症的不安などが一ヶ月以上続く ・発作の原因が投薬や甲状腺機能亢進症やその他の身体の病気によるものでない などの一定の基準に従って診断されます。
ページトップへ ●さまざまな病態 ・パニック発作のみを繰り返す ・予期不安を伴う ・予期不安や広場恐怖を伴う ・心気症的不安(心臓病など重い病気なのではないかと気に病む)を伴う ・うつ病を併発する あるいは 後にうつ病を発症する など、人によりさまざまな病態があります。 ○うつ病の併発 パニック障害と併発しやすい病気に「うつ病」があります。 パニック障害の発症前からのものや、パニック障害が治まった後のものも含めればパニック障害患者の半数以上がうつ病を発症しているといいます。 パニック障害などの不安障害に見られるうつ病を「不安うつ病」といい、特にパニック障害に見られるものを「パニック性不安うつ病」として普通のうつ病(定型うつ病)と区別されることもあります。 ○アルコール依存症になりやすい パニック障害になる前からアルコール依存症があったり、またパニック障害に伴う不安や恐怖をアルコールの力で紛らわしているうちにアルコール依存症になるケースもあります。 ページトップへ ●パニック障害の原因 ○脳内不安神経機構の異常 パニック障害の原因は完全には解明されていませんが、最近では「脳内不安神経機構の異常ではないか」と考えられています。 ヒトの脳には無数の神経細胞(ニューロン)があり、その間を情報が伝わることで運動や知覚、感情、自律神経などの働きが起こります。 パニック発作や予期不安、恐怖などもこの脳の機能のあらわれで、そこに何らかの誤作動が生じるために起こっていると考えられるのです。神経細胞間の情報を伝える化学物質(神経伝達物質)やそれを受けとめる受容体(レセプター)の機能の異常が関係しているのではないか、という研究が進められています。 【ノルアドレナリン仮説】 脳の青斑核という部分では、ノルアドレナリンという神経伝達物質を分泌し、危険が迫ったときに警報を発動する神経が作動するようになっています。パニック障害の場合、このノルアドレナリンの過剰分泌あるいはレセプターの過敏が起きているのではないかと考えられています。 【セロトニン仮説】 ノルアドレナリンにより引き起こされる不安感がいきすぎないよう抑える働きのあるセロトニンという神経伝達物質が、不足したりまたはレセプターが鈍くなっているためではないか、という説です。またセロトニンの過剰によるとする説もあります。 【ギャバ・ベンゾジアゼピン仮説】 不安を抑える働きのある神経伝達物質のギャバのレセプターや連結しているベンゾジアゼピン・レセプターの感受性に問題があるのではないかという説です。 ○遺伝体質やストレスとの関係 パニック障害の患者の家系にはパニック障害やうつ病、アルコール依存症などの発症率が高いとされています。 うつ病やアルコール依存症も根底には不安が関係しており、不安を持ちやすい体質が何らか関連しているのではないかと考えられます。 ストレスとの関係は明らかにはなっていませんが、体質に加えストレスの多い環境や幼児期のつらい体験などの後天的な要素により発症するのではないかと考えられています。 ○「心因性」ではなく「身体因性」ととらえるのが現在の主流 「幼児期の体験など過去のトラウマや性格的なもの」に注目する考え方は最近では少なくなり、発症や悪化の誘引としてストレスなどが関係していることは否めないが、原因はあくまでも脳内不安神経機構の異常という生物学的なもので、ストレスで壊した胃を薬で治療するように、パニック障害も治療するのが対処としては有効であると考えられています。
ページトップへ ●パニック障害の治療 病院での治療は薬物療法と心理療法(認知行動療法)が中心です。 まずは薬でパニック発作を抑え込み、不安や恐怖感をコントロールできるようになるためには認知行動療法があります。また食事や睡眠など生活全般を整えていくための食事療法などがあります。 ○薬物療法 まずは薬でパニック発作を抑え込んでコントロールしながら、最終的には薬を飲まなくてもよい状態に持っていきます。 急性期 薬でパニック発作を抑え込む ↓ 効果や副作用をみて服薬量などを調整 安定投与を継続し、その間に予期不安や広場恐怖を治す ↓ 症状が抑えこまれたことを確認しながら薬を減量 【主な薬の種類】 <抗うつ薬> セロトニンやアドレナリンの機能に働きかけてうつ症状を改善する薬です。パニック障害にも効果があることがわかっています。 ・三環系抗うつ薬 ・SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬) ・SNRI(選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬) <抗不安薬> 不安を抑える薬です。 ・ベンゾジアゼピン系抗不安薬 ・β遮断薬 ○認知行動療法 認知行動療法とは、ちょっと心臓がドキドキしただけで「死んでしまうのでは」と物事を悪い方にばかり考えたり、本来恐怖や不安を感じる必要のないことに過敏に反応してしまうなどの「心の過った反応」を治していくことが目的です。 自分の生活状況や考え方、行動がパニック発作とどう関連しているかを理解し、電車にのれない、人ごみを歩けないなどの行動をコントロールできるようにしていく訓練療法です。 【自律訓練法(リラクゼーション)】 不安やパニックが起きたときに呼吸法やリラクゼーション法によってコントロールする方法を身につけます。からだの緊張を解く→心のリラックスを引き起こすことを利用します。 【暴露療法(エクスポージャー)】 不安や恐怖のために避けている場所や状況に少しずつ慣らし、克服した経験をつんで自信をつけていく方法です。「自分が避けている場所がパニック発作とは関係がない」ことを身をもって確かめていきます。最初の目標がクリアできたら、少しずつ段階的に目標のレベルを上げていきます。 ○日常生活での注意 【食生活の改善】 栄養のバランスの乱れは内臓など身体に影響を与えますが、セロトニンなどの脳内物質にも影響することも考えられます。また、ジャンクフードや糖分の摂りすぎはパニック発作の誘因といわれる低血糖の原因になります。健康を作る基本として食生活を正しくしましょう。 【規則正しい生活】 食事とともに規則正しい生活は健康に欠かせないものですが、睡眠不足や過労、かぜ、二日酔いなどはパニック障害に影響したり誘因ともなることがあるので、体調を崩さないよう心がけましょう。 【軽い運動をする】 乳酸の蓄積はパニック障害の悪化を招くので、軽く汗をかくほどの有酸素運動をすることが有効といわれています。 【自律神経を鍛える】 パニック障害は自律神経失調症状が出る病気なので自律神経を鍛えることがよいでしょう。 【飲酒・喫煙・カフェインについて】 アルコールやニコチンには抗不安作用がありますが、すぐリバウンドがきて症状を悪化させます。またコーヒーなどに含まれるカフェインによりパニック発作が誘発される場合があります。 ページトップへ ●家族や周囲の対応 ○どう接すればいいのか 【病気を理解する】 周囲の人も病気について理解してあげることが必要です。 まず、身体に異常がなくとも激しい症状が起きる病気があるということを認識しましょう。また仮病や気の持ちようで治るものではなく、治るまで時間がかかることもあることを理解しましょう。 【発作が起きてもあわてず騒がず】 周囲が騒ぐと本人の不安が増します。楽な体勢にさせてやさしく声をかけたり身体を摩ったりして落ち着かせ、「すぐに治まる」と安心させます。 【外出や通院の同行や食生活のサポート】 広場恐怖があると一人で電車に乗ったり街中を歩くことが困難な場合があります。通院や暴露療法などの治療で必要な際には同行してあげましょう。また、正しい食生活など日常的なサポートも。 【うつ病の併発もあると知っておく】 パニック障害はうつ病を併発することがあり、またパニック障害が治ってきた頃に発症することもあります。適切な対応ができるよう早く気づいてあげることです。 ページトップへ (以上は 書籍・サイトなどの資料を参考に一般的なパニック障害の知識をまとめたものです :参考文献)
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